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退職代行会社から、未払残業を請求されないようにするための事前予防対策とは?

就業規則給与計算
松林 大樹コステム社会保険労務士事務所 代表

社会保険労務士・ PHP研究所認定チームコーチ。厚生労働省や都道府県等のホワイト企業認定マーク取得、㈱ワーク・ライフバランス認定「働き方見直しコンサルティング」、クラウド勤怠管理システム導入など採用力・定着力向上のための働きやすい職場環境づくりを支援している。講演実績としてアサヒビール(株)、コクヨ(株)、(株)デンソーセールス、農林水産省など。石川県金沢市のコステム社会保険労務士事務所の代表を務める。 プロフィールはこちら https://www.costem-sr.jp/about/profile

退職代行会社からの突然の退職届に、未払残業代(時間外手当)請求が付随することは決して珍しいことではありません。
このような問題に直面する前に、未払残業の原因と対策を知っておくことが重要となります。
今回の記事では、一般的に退職代行会社から未払残業代(時間外手当)を請求されるケースを6つ取り上げ、その対策について解説します。
本記事を読み、退職代行会社からの未払残業請求トラブルに発展しないよう、しっかりと対策を講じましょう。

ケース1:管理職=管理監督者とし、残業代(時間外手当)を不支給にしていた。

労働基準法41条では、管理監督者は、労働時間等の規定を適用しないとあり、管理監督者=自社の管理職と定義し、管理職になると残業代(時間外手当)や休日出勤手当が支払われないことがあります。
管理監督者は、労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、管理監督者に当てはまるかどうかは、役職名だけではなく、その職務内容、責任と権限、勤務実態等の実態によって判断する必要があります。
具体的には以下のチェックポイントが挙げられます。

  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有しているか?
  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有しているか?
    ・採用や解雇権、人事評価を有しているのか?
    ・シフト作成や残業命令を行う権限を有しているのか? など
  • 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
    ・遅刻、早退してもいいのか?減給や評価マイナスにならないのか?
    ・営業時間中、所属先にいないと駄目ではないか?
    ・部下と同じような仕事をしていないか? など
  • 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること
    ・基本給や役職手当等、実際の労働時間を勘案すると、部下と比較して低すぎないか?
    ・支払われた1年間の賃金総額が会社の一般的な労働者と比べて低くないか? など

管理職になったからといって、安易に管理監督者とすることなく、運用することが大事です。

ケース2:パートタイマー・アルバイト。基本給は時給なのに、手当が月給。

パートタイマーやアルバイトで、基本給は時給なのに、資格手当や、役職手当を月給で支払っているケースがあります。
そして、そのようなケースの場合、時間外の単価計算を時給の基本給のみとし、月給で支払っている手当を含んでいないケースがあります。
月給で手当を支払っている場合、その月の所定労働日数で手当を時給に割り戻し、残業代(時間外手当)を計算する必要があります。

ケース3:自主申告がない時間は、残業扱いではない。

事前申告し、上司が承認しない場合、残業を認めないとする企業もあります。
この運用自体、間違ってはいないのですが、申請なしで残っていることが常態化している場合、黙示の指示があったとみなされ、事前申告と承認がなくても、残業代(時間外手当)の支払が必要になることがあります。

打刻時間を把握し、実際の労働時間と差異がないか、不正はないかの定期的な確認や、同じような仕事をしている従業員と極端に違いはないかの確認も効果的です。

ケース4:固定時間外手当の制度設計ミス。

一定時間数の残業代(時間外手当)を残業の有無にかかわらず、固定給として支払う固定時間外手当という制度があります。
その固定時間外手当を導入していても、その制度設計が要件を満たしていなかったために、固定時間外手当として認められないケースがあります。

  1. 就業規則(賃金規程)に記載がない。労働条件通知書に記載がない。
    就業規則(賃金規程)や労働条件通知書に、手当名や、何時間分の残業代(時間外手当)が含まれているのか記載がなく、労働条件として成立できていない。
  2. 基本給に組み込まれている。
    固定時間外手当が基本給に組み込まれるような設計の場合、どこまでが基本給で、どこからが時間外手当がわからず、固定時間外手当として認められない場合があります。
  3. 手当名がよくわからない手当名になっている。
    内容は固定時間外手当だが、手当名から固定時間外手当が推測しづらい名称になっている場合も、固定時間外手当として認められないことがあります。
  4. 何時間分なのかわからない。
    固定時間外手当が何時間分かわからず、固定時間外手当を超過した分の残業代(時間外手当)を支払っていないような場合も、固定時間外手当として認められないことがあります。

要件にあった制度になっているかの定期的な見直しと、給与計算ソフトの設定を把握することが重要です。

ケース5:残業代(時間外手当)の単価計算が間違っている①。
必要な手当が含まれていない。

残業代(時間外手当)の単価計算そのものが間違っていることもあります。
業績などによる歩合給やコミッションなどの手当、福祉施設での処遇改善手当なども含まれていないことがあります。

残業代(時間外手当)の単価計算に含まなくてもよい手当かどうかの確認を給与計算の際には行う必要があります。

ケース6:残業代(時間外手当)の単価計算が間違っている②。
年間休日や所定労働時間が変更になったのに、単価計算を変更していない。

残業代(時間外手当)の単価計算をする際、分母の平均所定労働時間数の計算が誤っているケースがあります。
働き方改革が進み、所定労働時間や年間休日数が増え、平均所定労働時間数が減少することで、残業代(時間外手当)の単価は高くなるのですが、給与計算ソフトの設定を変更していなかったために、低い単価で残業代(時間外手当)の計算をしているケースがあります。
給与計算ソフトの設定の定期的な確認が重要です。

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