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欠勤控除の正しい計算方法と注意すべき点

給与計算
松林 大樹コステム社会保険労務士事務所 代表

社会保険労務士・ PHP研究所認定チームコーチ。厚生労働省や都道府県等のホワイト企業認定マーク取得、㈱ワーク・ライフバランス認定「働き方見直しコンサルティング」、クラウド勤怠管理システム導入など採用力・定着力向上のための働きやすい職場環境づくりを支援している。講演実績としてアサヒビール(株)、コクヨ(株)、(株)デンソーセールス、農林水産省など。石川県金沢市のコステム社会保険労務士事務所の代表を務める。 プロフィールはこちら https://www.costem-sr.jp/about/profile

給与計算における欠勤控除の計算方法と、間違えが多い注意点について、わかりやすく解説します。具体的な事例を交えながら、就業規則の見直しや手続き上のポイントについても詳しく説明します。

欠勤控除とは?基本的な概念の理解

欠勤控除とは?

欠勤控除とは、従業員が働くべき日に欠勤した場合、その欠勤分の給与を差し引く制度を指します。
この制度は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいており、労働者が働かなかった分、企業は給与を支払う義務がありません。
一般の正社員の日給月給制の場合は、固定給から欠勤日数分の賃金を控除して支給します。
ただし、欠勤控除がすべての固定給や欠勤日数が必ず適用されるわけではなく、何を欠勤控除の対象とするかは企業ごとに異なるため、就業規則を確認することが重要になります。

欠勤控除が発生するケース

従業員が勤務しなくてはいけない日に休んだ際に、欠勤控除が発生します。
・有給休暇を使わずに休んだ場合
 例:体調不良やインフルエンザで休んだが、有給休暇を申請しなかった場合は、欠勤控除の対象
   となります。
・私的な理由で休んだ場合
 例:個人的な事情で仕事を休んだ場合、欠勤控除が発生します。

欠勤控除の計算方法

欠勤控除額の計算式

欠勤控除額の計算は、従業員の勤務形態や給与形態によって異なります。ここでは、日給月給制の正社員に適用される一般的な計算方法を紹介します。

計算式: 欠勤控除額 = 賃金 ÷ 月の所定労働日数 × 欠勤日数

この方法では、賃金を所定労働日数で割り、1日あたりの給与額を算出します。そして、欠勤した日数を掛け合わせて欠勤控除額を求めます。

控除の対象となる賃金とは?

分子に含まれる賃金は、基本給に加えて、各種手当が含まれるかどうかを検討する必要があります。
例えば、通勤手当や資格手当など、出勤に連動する手当は欠勤控除の対象とすることが一般的です。
一方、家族手当や扶養手当など、出勤に関係ない手当は控除の対象としない場合があります。
これらの手当の扱いは、企業の判断に委ねられますが、事前にどの手当を控除対象にするかを明確にし、就業規則に反映させることが大切です。

分母の所定労働日数とは?

欠勤控除額の計算における分母の所定労働日数には、以下の3つの方法があります。どの方法を採用するかは企業が決定し、就業規則や賃金規程に明記する必要があります。
それぞれの違いや特徴を理解して、適切な方法を選びましょう。
次の例で、それぞれの計算方法を説明します。
・対象となる給与:200,000円
・その月の所定労働日数 22日
・月の平均所定労働日数 20日
・月の歴日日数 31日
・欠勤日数 4日
・出勤日数 18日

  1. 1か月平均所定労働日数  
    年間の総所定労働日数を12で割って、1か月あたりの平均所定労働日数を算出します。  
    この方法は、月ごとの労働日数の変動を抑え、月によって変動がなく、安定した計算ができる点が特徴です。

    200,000円÷22日=9,090円(端数切捨て)
    9,090円×欠勤日数4日=36,360円 が欠勤控除額になります。
  2. その月の所定労働日数
    欠勤が発生した月の実際の所定労働日数を使用します。
    この方法は、現実的な勤務日数を反映できますが、月ごとに所定労働日数が異なる場合、単価が変動するため計算が複雑になります。

    200,000円÷20日=10,000円
    10,000円×欠勤日数4日=40,000円 が欠勤控除額になります。
  3. その月の歴日数
    暦日、つまりその月の日数を基に計算する方法です。
    月ごとに日数が異なるため、2月のような短い月や31日の月で大きな差が生じることがあります。

    200,000円÷31日=6,451円
    6,451円×欠勤日数4日=25,804円 が欠勤控除額になります。

    これらの方法の違いを理解し、会社に合った方法を選び、就業規則に明記することが重要です。

遅刻や早退の場合の控除額は?

遅刻や早退が発生した場合の遅刻早退控除の計算方法は、1時間あたりの賃金を基に行います。
例えば、日給月給制の正社員に適用される一般的な計算方法として、月給が20万円で月平均の所定労働時間が160時間の場合、1時間あたりの賃金は以下のように計算されます。

計算例:
1時間あたりの賃金:200,000円 ÷ 160時間 = 1,250円
30分(0.5時間)の遅刻があった場合の控除額:1,250円 × 0.5 = 625円

この場合、625円が月給から控除されます。遅刻や早退分以上の控除を行ってはいけないため、正確な計算が求められ、小数点以下端数が生じた場合は、端数は切り捨てます。
遅刻早退控除の計算においては、以下の3つの時間数の方法があります。

  1. 1か月平均所定労働時間数
    年間の総労働時間数を12で割り、月ごとの変動を抑え、安定した計算が可能です。
  2. その月の所定労働時間数
    遅刻や早退があった月の実際の労働時間数を基に計算します。月によって所定労働時間が異なる場合があり、計算が複雑になる可能性があります。
  3. その月の歴時間数
    暦日を基に計算する方法です。月ごとに日数が異なるため、月によって大きな差が生じる場合があります。

欠勤控除の注意点

就業規則(賃金規程)に欠勤控除の方法を記載する

欠勤控除は法律で定められたルールではないため、適切な運用を行うために、就業規則(賃金規程)でその基準を明確にする必要があります。
これにより、以下の効果が期待できます。

労使間のトラブル防止
 欠勤控除の基準が曖昧だったり、周知がされていないと、従業員から「勝手に給与が控除された」
 といった不満が生じる可能性があります。
 事前に明記しておくことで、トラブルを未然に防げます。
・計算ミスの削減
 統一したルールを定めておくことで、担当者によって計算方法が異なることを防ぎ、給与計算時
 のミスを減らせます。

欠勤控除額の端数処理に注意

欠勤控除の計算時に1円未満の端数が生じた場合、端数を切り上げることは労働者に不利益を与える可能性があるため、原則として「切り捨て」で処理します。
例えば、控除額が1,234.56円であれば、1,234円として計算します。
誤って、切り上げを行うと、欠勤していない時間分まで控除してしまい、ノーワーク・ノーペイの原則や労働基準法の賃金全額払いの原則に反する可能性があります。

参考:厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」

固定時間外手当が支給されている場合に注意

固定時間外手当は、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ定められた一定時間分の残業代を支払う制度です。
就業規則(賃金規程)に控除時のルールを定めていれば、欠勤控除の対象とすることも可能です。
しかし、固定時間外手当を控除した場合、控除後の手当が何時間分に相当するかを計算し、その残業時間が時間外の有無に関係なく時間外労働をしたとみなした時間や実際に残業した時間など、規程で定めた時間を超えている場合には、超過分の時間外手当を支払う必要があります。
この計算が煩雑になるため、注意深く確認し、計算することが重要です。

欠勤の事由に注意

従業員が欠勤した場合でも、その理由によっては控除の対象にならないケースがあります。例えば、病気や慶弔事由で休んだ場合、会社が特別休暇や慶弔休暇として認めれば、欠勤控除は適用されません。
こうしたケースでは、欠勤控除を誤って適用してしまうと従業員とのトラブルが発生する可能性があります。就業規則や休暇制度を確認し、欠勤の理由に応じて適切な対応を取ることが大切です。

まとめ

欠勤控除は、給与計算でミスが起こりやすい部分の一つです。適切なルール整備を行うことでトラブルを未然に防ぐことができます。計算方法に不安がある場合や難しく感じる際には、コステム社会保険労務士事務所の無料相談をご活用ください。

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